黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

1年前の7月、愛猫に扁平上皮癌が見つかった②

専門医にて、運命のバイオプシー

 もしかしたらいきなり顎切除の大手術になるかもしれないと、緊張して迎えた7月20日。午後1時半にかかりつけ医で抗生剤の皮下点滴をして2時に出発、4時から専門医で診察を受ける段取りだった。

 クロスケは、早朝4時35分に与えたカリカリ18gの半分程度を食べた後は、ごはん抜きで投薬のみ。暑い中、ごはん抜きは体力も消耗するし大丈夫かと心配だった。おじいちゃん猫なのに。

 今思うと、前日までのその週は、好物のだしカップカントリーロードのパウダーをかけたカリカリをよく食べて、口の中の問題さえなければほぼ普通に過ごしていた。それが、この20日を境に息子の状態は一変するのだから…。

 専門医は、マンションの一室がクリニックになっているような狭さで、前のワンちゃんがほぼ終わるまでは駐車場で待機。ワンちゃんと入れ替わりに呼ばれて玄関口から診察室なのか待合室なのか判然としないスペースに入ったところ、その狭い部屋あちこちに防犯カメラが設置されているのを見つけ、ちょっと面食らった。

 息子を診ていただいて、愛想があるとは言えない先生がつっけんどんに言うには、できものが扁平上皮癌と特定できるものではなく、検査が必要で、従って、顎の切除手術もいきなりできるものではないとのことだった。

 「やれって言うの?できるわけないじゃないのー」と先生。まあそうなんでしょうけど、K医師の予想ははずれた。高齢猫の息子の体力温存を考えたら、麻酔が1度減らせるからいきなり手術でも選択肢として仕方ないのかもしれないと思っていたが、手術は無いとわかり、緊張感の中でちょっと気が緩んだ。

 ということで、息子はバイオプシーという組織検査を受けることになった。一緒に来ていた家族は「見てられない」と言って廊下に出たので、私はひとり、専門医と助手の手中にある息子を見守ることになった。

 何より驚いたのは、その専門医が私がいる場所からまったくオープンな、ちょっとだけ離れた台の上で、うちのクロスケの検査を始めたことだった。獣医も助手も、診察着らしきものを着て頭も口元も覆っていたが、ドアが無い隣の部屋は、私から丸見えで簡単に入っていけてしまいそう。

 私は消毒も何もしていない。特別な衣類を着たわけでもない。マスクもしていない。自分が検査中にそこに存在していることで、衛生面が不安になった。

 心配は簡単にエスカレートしていく。「でも検査程度では心配するには及ばないはず、専門医を信じよう」と内心で自分をなだめつつ息子に声援を送りながら、膝の荷物を抱きしめていた。

 そうしたら、方向転換のため、ずいぶんと乱暴に専門医の手によって振り回された後で、息子の体が軽く跳ね上がるのが目に入った。跳ね上がると同時に大き目のホッチキスを使った時のようなバチンという音がして、麻酔をしているはずの息子の「にゃあ」という悲鳴が聞こえた。

 クロスケは大丈夫か。自分の鼓動が大きくなったのが分かった。あまりのことに目が見開いたまま、でも努めて冷静に専門医の説明を聞いた。

 息子の赤い病変のある歯茎の組織だけではなく、顎の骨にもできものの浸潤が予想できたので、念のため顎の骨も含めてパンチで組織を採取した…とのことだった。どれくらいの範囲にまで病変が及んでいるのか確認したいとの話だったと思う。

 そうか、そうなんだね、説明は分からないではない。私はしかし、ぐったりした息子のことが気が気でなくて、ろくに話を聞いていなかった。一刻も早く息子を連れて部屋を出たかった。掌中の珠のように大切にしてきた息子があんなに振り回されて、「ひどい、なんと乱暴な」とショックを受けた瞬間に、さらに大きな悪夢が目の前に。とにかくショック、こうなってしまったことがまず信じられない。ここまでダメージが大きい検査だとは、理解していなかった。

 バイオプシーにも種類があるらしく「パンチ・FNA・切開」といただいた処置明細には印刷してあり、「パンチ」に〇がしてあった。表面のできものを切除してそれを検査に出す程度ならば、ダメージが減らせたのではなかったか。後から考えれば、それをお願いしたかった…おじいちゃん猫なのに。

 それに、専門医からは、息子への慈しみのかけらも私には感じられなかった。ただただ軽々しく息子の体を検査台の上でブン回すような人物に、息子の命を委ね、取り返しのつかないことをさせてしまったのではないか、間違ったチョイスをしてしまったのでは…と、怖かった。

 1年後の今考えてみても、バイオプシーが分岐点だった。あの朝に戻れるなら、絶対に自分を止めたい。まっすぐホメオパシー獣医の下へ相談に行けと言いたい。息子に申し訳ない。