黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

1年前の7月、愛猫に扁平上皮癌が見つかった⑥

7月末日、手術

 いよいよ7月31日、術前の血液検査で手術できる数値をクリアできたことで、息子は専門医の手によって下顎の右側を切除する手術ができることになった。当初、できるだけ手術はしたくなかったはずだったが、皮肉なものだ。今この時、手術をしなければ息子とは数日もせずにお別れしなければならなかっただろう。

 手術死を恐れて執刀を渋っていたらしい専門医を説き伏せて、手術まで持って行ってくださったS先生には感謝しかない。

 実は、前日の30日のS先生との打ち合わせでは、専門医はこう指摘していた(メモを見せてもらった)。元々、クロスケの白血球が少ない/顎骨折で骨が露出している(何のせいだ…)➡菌が体内に入り込みやすい。抵抗力が無く、敗血症にほぼなるだろう。手術で亡くなるリスクが高い、と。

 さらに、血栓症が引き起こされることで、心筋梗塞脳梗塞・多臓器不全・腎不全につながると…。

 この頃いつもK先生は、何とかこちらに手術を諦めさせ安楽死を選択させようとしているようで苛立ちは隠しようもなく、長い話の言葉の端々から「いいかげんにしろ」と心の声が聞こえてくるようだったから、それは手術死を恐れ、執刀を嫌がる専門医の意向を慮ってのことだったんだろうな、と腑に落ちた。K先生は、患者でなく専門医の顔色を見ていたのだろう。

 息子を預けるこちらとしては大いに困るが、K先生の振る舞いはよくあること。何といっても自分と同じ領域の専門医だ。患者は one of them で、それ限りだけれども、専門医との付き合いはずっと続く。専門医の下に研修にも通っていると聞いたし、大げさに言えば自分の将来が専門医の顔色一つにかかっていると思っていたかもしれない。

 私は、専門の違うS先生に、どう思うのか、と聞いてみた。

 「五分五分だと思います」とS先生は言った。50%も手術を乗り越えられる可能性がある。私は「手術をしてもらわないと、生きる可能性が無くなってしまう。ぜひお願いします」と言った。そして、S先生は、専門医の執刀条件である血液の検査数値を、当日朝にきっちり揃えてくださったのだ。

 息子への麻酔は、11時半ごろに始まった。2時間半の手術の間、味もわからないままファミレスで日替わりランチを流し込んだ。落ち着きなく居ても立ってもいられず、とりあえず病院スタッフのためにと、マカロン20個を買ってきた。願うのは、あのままではあんまりだ、安らかな余生を少しでも自宅で過ごさせてあげたい、ということだけだった。

 手術が終わり、まもなく専門医の説明を聞いた。息子は生きている。とにかく手術をして、命をつないでくださったことにひたすら感謝した。

 息子の下顎の正中線から右側をごっそり切り取ってしまう手術は、やはり難しかったのか、予定よりも1時間伸びた。残念ながら、右下顎の癌はかなり広がっていた。しかしQOLを考えて、dirtyな部分(つまり癌が浸潤していた細胞がある部分ということだろう)はあったものの、顎関節に及ぶ切除はせず、下顎のリンパ節も取らなかったとのことだった。

 息子はよく頑張った。私もできるだけのことをしよう、と思った。