黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

台風一過の散歩

 今日は快晴。台風一過、外に出てみたら雲が本当に1つも見つからないくらいの青空だった。

 自宅でじっと動かないままだと頭痛が始まってしまうタチの家族が、前日の連休初日にして「明日は散歩に行こう」と言い出した。洗濯機を回したままだったけれども支度をして、午前中に出かけた。

 目的地は、地元では大きめなS公園にしようと昨日、家族が言っていた。

 面倒くさがりの家族の言うことだから、出かけようと言われても、結局なんだかんだと用事に追われて出かけずじまいに終わることも多い。だから、私の方は前日の話も話半分に聞いていたし、朝から洗濯もスタートしていた。

 それなのに、予想に反して家族は出かける気満々だ。明日も出かける予定があるのになあ・・・息子の回復祈願をしてもらった寺院で、ペット彼岸会がある。そこに申し込んであるのだ。

 いつだったか、その公園には1度やはり歩いて行ったことがある。帰りは電車で帰ってきたのだったか・・・行くだけで1時間弱はかかるような気がした。

 玄関で、家族がいくぶん古めの地図の本を持ってきて道を確認していたので、私は「スマホの地図アプリは設定しないけどいい?」と聞いたらOKだという。それで、完全に家族任せで歩き出した。

 引っ越してきて10年近くになるのに、まだ周囲の道がすっかり頭に入っている状態ではなく、過去に迷った道を、また迷いながら適当に歩いた。そろそろベーグル店があるはずだったが、ここを出たら左にあるよね?と思ったら右だったり。うろ覚えもいいところだ。

 行くと閉店していることが多い、私とは相性があまり良くないこのベーグル店が珍しくもオープンしていたので、せっかくだから1つずつ購入。目的地の公園で食べようと思った。

 ここから先、もうしばらくすると途中に激安の店があったはず。そこで水を買おうと思ったが、がまんできずに目に入ったコンビニで買った。

 相変わらず、以前歩いた道のような気もするが、違うような気もして自信がない。「ここが○○だったら正解!」などと家族が持つ地図情報を頼りに、歩き続けた。

 前にあの公園に歩いて行ったときは、息子クロスケはお留守番だったんだ・・・帰って「どこに行ってたんだ!」と怒られたんだったか、どうだったっけ。

 考えてみると、よく息子を置いて出かけたものだ。よほど、歩きたかったのか。

 そんなことを考えて歩き続けていたら、そろそろK院があると家族が言う。息子が天国に昇って行った、ペット供養施設を併設している寺院だ。

 ああ、そうだった。昨日、家族が「公園に行くまでの途中にK院があるね」と言っていた。隣にあったお寺にお参りをしてなかったとか何とか言っていたような・・・「そこでお参りしてもいいんじゃない?」と私は適当に答えていたのだった。

 以前の散歩の際には、K院の存在は頭になかった。息子は元気で、まさか散歩途中に将来、息子を見送る施設があるなんて、考えもしなかったから。

 散歩自体、前日に話をしていた時には実現可能性が低いと見ていたくらいだったので、K院の出現にはちょっと心の準備が間に合っていなかった。

 曼殊沙華の咲き始めた広い境内には、夏草がまだ元気に生えているところもあった。剪定をしてあげたい!とYouTubeで最近はまっている園芸動画のにわか知識を振り回して家族と喋っていた時にはまだ良かったが、裏に回ってペット供養施設が目の前に見えてきた時には、急に涙が出て息が詰まる思いがしてしまった。

 ああ・・・ここだ。ここ。ここで息子に別れを告げたんだ。あの日も、今日の雲1つない空には負けるけれど、同じような真っ青な空だった。

 そう思ったら、胸がキューっと痛くなってしまった。ふさがっていたはずの傷口が、一気に開いたような・・・まだここまでの気持ちになってしまうことに、自分でも驚いた。

 この施設に来るのは、息子を送って以来、初めてだった。

 確か、この地域で猫の世話をしている団体の共同墓がこちらにあるはずだと思い出し、見てみるとすぐに見つかった。そこに手を合わせてから、たくさんのペット名の書かれた卒塔婆に囲まれた、大きな合同供養塔にも手を合わせた。

 こちらに供養をお願いしていたわけではないので、息子の卒塔婆は無い。

 施設の人が気づいて、「お線香を上げますか」と言ってくださったので、ありがたくお線香をいただいて、その合同供養塔にお供えした。

 たくさんの人たちが既にお参りに来ているらしく、お線香を上げようにも容器がいっぱいだし、まだ燃えている状態だった。気をつけて、端に入れた。

 息子を見送った日に比べると、なるほど人が多い。みなさん、お彼岸にペットの供養に来ているんだろう。

 家族は、満足したようで「もう帰ろう」と言った。「公園は?」と聞くと、「もういい」と言う。すたすたと、道を戻って歩き始めた。

 「ここに来られてよかった、来たかったんだ」「ここは、クロスケが天に昇って行った場所だから、クロスケにとってのエルサレムだ」と、晴れやかに言う家族。

 そうか・・・初めから、公園になんぞ行こうと思ってはいなかったのかな。やられた。

 明日、以前から回復祈願をお願いしていた関係で、別の寺院での彼岸会に行くことにしてしまっていたが、このK院からも、彼岸会の案内をもらっていた。K院にすれば良かったのか・・・。

 また、涙があふれてしまうかもしれないけれど、たまにはこのK院にも散歩に来ようと思う。

 胸がいっぱいになってしまって食欲もなかったが、ベーグルは帰宅して食べた。