黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

注目の裁判・危険運転致死傷幇助事件

さいたま地裁から東京高裁へと舞台が移った「危険運転致死傷幇助事件」の裁判。裁判員裁判で裁かれるのは全国でも初めてであり、拙著「被害者のための刑事裁判ガイド」の第3部ケース2で、第3裁判(進行中)としてご紹介させていただいている話だ。昨日、控訴審の初公判が開かれ、結審した。判決は11月17日と決まった。
 
今年の夏は、節電の関係で裁判所も暑い。今月上旬の別件の裁判の際には、法廷に向かうエレベーターの密室中でいつも汗が噴き出した。法廷前の廊下で傍聴待ちの際も、オバサンは扇子ですぐにあおぎたくなる。その暑さを思い出し、今回は最初から上着着用をあきらめていた。恐縮だが、無理でした。しかし、被害者のご家族は黒いスーツを身につけて裁判に臨んでいた。ひところよりは和らいだ天気とはいえ、折り目正しい身なりに蒸し暑さが気の毒だった。
 
さて、この危険運転幇助事件をめぐっては、「飲酒運転の車に同乗しただけで罪に問われるのか」という、道交法上の飲酒運転同乗罪と混乱しての的外れな議論もネット上では目につく。そういう書き込みをしている人たちは、道交法違反の方にあてはまるだろう軽い内容を今回の事件でも想像し、そして危険運転幇助の罰則を見て「厳罰化の極み」などと否定的に考えている傾向があるように思う。
 
しかし、今回の事件の実態は「飲酒運転に同乗しただけ」からはかけ離れているのだと言っておきたい。そのように思わせる不十分な前置き・説明で済ませている報道も目についたので、それはミスリードだろうと思う。
 
危険運転で懲役16年の実刑が確定している運転手は、ひどく酔ったまま高速度で暴走し、自分を含め9人死傷の大事故を起こしている。今回の被告人ふたりについては、この運転手を含めた仲間と散々飲み食いをして手持ちの金銭を使ってしまった後で、日ごろからふたりのうちの1人のパシリであったこの運転手(ふたりの会社の後輩)に、かわいい女の子のいるキャバクラでタダ酒をおごらせようと、運転手の「車自慢」につけこんで暴走させた張本人だ--と被害者ご家族は考え、告訴した。それも、危険運転致死傷の「共同正犯」としてだ。
 
さいたま地検は慎重を期して危険運転をあおった「幇助犯」として起訴したが、「教唆犯」に近い悪質なものと考えていた。求刑も、運転手の実刑16年から考えて幇助犯としての最高の8年だった。被害者参加したご家族は10年を求刑。さいたま地裁裁判員裁判による判決は、「幇助の態様は悪質でない」とトーンダウンされたものの、執行猶予のつかない懲役2年の実刑なのであり、きちんと危険運転の幇助との認定をしている。
 
このように、事故結果に責任を負うものではない道交法違反とは、今回は明らかに内容が異なるのだ。今回の被告人ふたりは、故意犯として、結果の重大さに責任があるものとの見方をしっかりされている。
 
(しかし…パシリがどんなものか、裁判官の皆様には未知の世界なのか?…パシリに対して車だけ貸せよ、なんてありえない。パシリは普通、車も出せば運転もするものでは?なんで車だけ貸す話だったら「幇助が悪質」になるのか…裁判上というか法律上は運転手を主と考えるから、その点で犯罪の主従と通常のパシリとは主従が逆転してしまうので、一見ややこしい。「教唆」と考えたら実態も反映してスッキリしそうだが…そこら辺もあるからか、溝を感じる。まあ、裁判員裁判だったからこそ実刑判決が出た、とのご家族の感想は外れていないだろう。)
 
昨日の控訴審では、控訴した被告人側の弁護人が、地裁が職権で証拠採用してその証拠調べをした手続きに法令違反があるとか、不公平な訴訟手続きであるとか・・・そんなことを言っても、裁判官が将来、自分たち裁判官の手を縛るような弁護人の主張に同意してくれるわけないじゃないか、と聞いているこちらが思ってしまうような内容を主張していた。その主張については、刑訴法の明文規定にも判例にも外れていると一蹴する説明が、被害者参加弁護士から会見であった。
 
蛇足ながら、職業裁判官に対して、まるで素人の裁判員に話しかけるかのような弁護人の話しぶりも驚きだった。裁判官3人は無表情だったが、内心カチーンとこないか?示したパネルにも見るべき内容はなかったようで(傍聴席からは見えない)…緊張して切り替えができなかったのだろうか。
 
そもそも、被告人側が控訴する意味はあったのか?法廷で弁護人の話を聞いて、被告人自身はどう考えたのか。つい、国税の無駄遣い…との文言が頭に浮かんでしまった。この税金を被害者支援に回してほしい。何より、被告人側の控訴によって、否応なく被害者は大いに振り回される。
 
この裁判については、とりあえず本稿はここまで。まだ書かねばならないことがあるので、続きます!